「医療崩壊」が話題になっている。事故やお産に直面して救急車を利用しても病院のたらい回し、連日の当直に睡眠不足の医師や重労働で憔悴した看護により医療過誤、救急医療の多い診療科への新人医師の忌避、救急病院の診療費未払いなど、話題に事欠かない。救急医療のなかには日常の精神科臨床のなかで培われたもろもろの技術が時間的空間的に凝縮されています。救急医療を支える人たちは、医師や看護師など医療従事者はもちろん、病院窓口の当直職員から地域の行政機関の窓口、さらには救急隊員、警察官まで多種多様な職種の人たちです。一方、医療を受ける側の人たちは、精神疾患による病状が憎悪したり、発症した人たち、貧困や社会的孤立ゆえに精神医療サービスの枠にはまらない人たち、夜間・休日のため行き場もなく追い詰められて激情にかられる人たちがいます。ふだん闇に埋もれた部分が救急医療の面前に現れて、命にかかわる場面が数多くあります。救急医療供給体制の問題点は、日本の地域医療計画における精神科ベッド配置の地域遍在に象徴されるように、民間精神病院が精神科医療のほとんどを担ってきた長い歴史を考えればその解消は容易ではありません。昨今の精神科病院の機能低下が精神科医療全体の供給体制を麻痺させようとしています。かわりに台頭した精神科クリニックは、救急医療を必要とするハードな病態の患者を敬遠し、救急のゲートキーパー(対象選別機能を担う者)としての役割を果たすことができず、救急医療を担う病院の疲弊を招いています。これは「医療崩壊」といっても過言ではありません。 精神科救急医療に利用者は何を望んでいるのか、どのような批判をもっているのか、という利用者の視点もふまえながら、精神科救急医療の現在を、そして将来を見据えた視点で多角的に問題の所在を明らかにしたいと思います。
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