宗教儀礼から広く展開した祭祀芸能は、神や鬼など多様な表現手段として仮面劇を活用し、古来より祭祀儀礼を担ってきた。日本の伝統芸能である能や狂言、また地域の祭りにみる田楽などもそうした祭祀芸能として発生し、中国や朝鮮半島との交流の中で発展してきた。本書は、これまで誰も成し遂げてこなかった、中国・朝鮮・日本の祭祀芸能を、文献の渉猟と長年にわたる現地調査に基づいて比較、分析し、東アジアの芸能全体の発生・展開・伝播の状況を俯瞰した画期的な業績である。中国演劇史研究で多くの業績を上げてきた著者が満を持して上梓する本書は、比較を通じ中国史や日本芸能史に新たな視座を提供するとともに、伝統芸能や現代演劇に関心をもつ読者に演劇の奥深い魅力を伝えてやまない。
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