半世紀前の庄内に、理想郷はあった。月山の麓に500年以上続く悠久の王祇祭。黒川村の内側から哀惜こめて描き上げた、女性編集者による感動の記録。1964年東京オリンピックの年、黒川能に出会う十一月、黒川村を訪ねる十二月から1965年のお正月を迎える王祇祭まで一か月、一月三日の「興行」一月十七日、春日神社の「十七夜祭」豆腐炙りと子供たちの能の稽古榊屋敷の神事・原初の風景振舞の準備が進み、当屋は神宿に整えられていく二月一日、王祇様が春日神社から雪道を当屋に降る稚児の「大地踏」、翁の「式三番」「暁の使い」登場、明け方まで演能はつづく王祇祭二日目、王祇様が春日神社へ還る若者たちの尋常事の熱狂が祭りを盛り上げる二月四日「解行」、王祇祭は終わり、そしてまたはじまる黒川にめぐる季節・冬から春へ黒川にめぐる季節・春黒川にめぐる季節・春から夏へ黒川にめぐる季節・秋黒川人の一生を想う"半世紀前の庄内に、理想郷(ユートピア)はあった――。月山の麓の黒川村で、500年以上続いてきた、悠久の王祇祭。"神人相和す"祭りの全貌を、村の内側から初めて克明に、そして、哀惜こめて描き上げた、女性編集者による二度とない感動の記録。東京オリンピックの喧騒の裏側で、本物の祝祭が行われていた!*****■著者より、本書によせてあれは、幻であったのだろうか――。1964年、日本中が東京オリンピックに湧き立っていた。私はグラフ雑誌「太陽」の編集者であったが、自らの神のもとに、老いも若きも一つに会して祭りをしている村を探して、山形の詩人・真壁仁の一篇の詩で「黒川能」を知った。2月1日、2日、春日神社の御神体「王祇様」を上座・下座の2軒の当屋に迎え、夜を徹して能・狂言を奉納する。幼童から少年、若者、長老まで、年齢ごとに場と役割がある。誰もが喜びをもっ
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