本書の直接の引き金になったのは、授業を盗聴するという卑劣な行為がキリスト教を標榜する大学で平然と行われていた事実である(明治学院大学授業盗聴事件)。この事実に接したときに浮上したのは、およそ二百年前にヘルダリーンとヘーゲルがともに獲得しようとしていた「学問の自由」と「自由の思想」である。ドイツの大学にある神学校で哲学と神学を学んでいた二人は、監視されたり盗聴されたりしながらも、フランス革命に触発されて自由の精神に目覚め、キリスト教に反発しながら、のちに偉大な詩人となり哲学者となっていく。―本書「まえがき」から。第1章 ヘルダリーンと自由―魂の漂泊者(出生と家族―詩人への不退転の決意;少年の詩作試行と夢―「マウルブロン清書稿」の成立;シュティフトを終えるも―詩人独立の道に;『ヒュペーリオン』―「生あるものの抹殺の不可能」;後期讃歌の一例―二つの授業あるいは「小さな時間」)第2章 ヘーゲルと自由―生の探求者(青年時代の理想―自由の哲学者への決意;宗教への欲求―『キリスト教の精神』;政教一致から政教分離へ―生の弁証法の成立;政治への欲求―『ドイツ国家体制の批判』;哲学への欲求―学問の体系から人間の生へ)魂の漂泊者ヘルダリーンと、生の探求者ヘーゲル。その二人がめざした学問の自由と自由の思想とは。<本書の直接の引き金になったのは、授業を盗聴するという卑劣な行為がキリスト教を標榜する大学で平然と行われていた事実である(明治学院大学授業盗聴事件)。この事実に接したときに浮上したのは、およそ二百年前にヘルダリーンとヘーゲルがともに獲得しようとしていた「学問の自由」と「自由の思想」である。ドイツの大学にある神学校で哲学と神学を学んでいた二人は、監視されたり盗聴されたりしながらも、フランス革命に
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