◆第一句集句集を読む楽しみは、詩の扉を開けて凡々たる日常から離れ別乾坤に遊ぶことにある。文学と音楽を愛する才媛がやがて母となり祖母となり、俳句の道を歩んで二〇年を経たいま、なお含羞の心をもって世に問う句集がここにある。扉を開くと颯々と風の渡る世界がそこにひろがっている。帯・中嶋鬼谷◆中嶋鬼谷抄出十二句をさな子のしづかな寝息木の実降る草いきれ前行く人のふつと消え山の端の月の出くらき鵜舟かな鍬ついて山を見てをり生身魂天窓の雪細りゆく雛かな空梅雨の夜空を白き雲流れ柊の匂ふ吉野のまくらがり産み終へてはくれんのごと眠りをり螢火のひとつ呼ばるるごと迅し斑鳩は蜷の道より暮れゆけりうすうすと棚田の跡や葛嵐耳病んで音無き雨の濃紫陽花
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