本書は、パブリック・アートの本質を探るために、彫刻家・田辺光彰の作品を分析するものである。野外彫刻に関わる多くの実績で知られる田辺は、一貫として美術とそれに接する人の関係、および美術と現代社会の関係を探求してきた。その試みは、作品の視覚的な形態を最重要視しつつ、美術独自の純化と進歩を追求する美術全体の流れとは異なる方向へ進むものであった。このため、その結果は必ずしも全ての美術関係者に理解される性質のものになってはいない。一方、美術の本質に関るきわめて重大な問題に取り組む作家として、社会学や都市・地域計画の専門家およびジャーナリストや一部の美術関係者から常に注目されてきた。
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