この願文の精神は、長い時代を越えて、第二次世界大戦終結直後の1945年に世界的な規模で採択されたユネスコ憲章と、実によく似通っているという点に着目したい。前者は前9年、後3年の役を契機として書かれた。後者は第二次世界大戦の反省を踏まえて成立した国際条約だ。ふたつの成文を貫く精神は、二度と戦争を起こさないためにはどうしたらよいか、という恒久平和実現のための智慧そのものである。本書では、この二つの文章を比較検討することによって、奥州という辺境の地とみなされていた平泉に花開いた黄金文化が、世界精神を文字通り体現していたことを証明してみたい。2009年、平泉は世界遺産登録に向けて再アタックを開始した。しかしその中心となるコンセプトは前回とほとんど同じ『浄土世界』(前回は浄土思想)である。私たちは、この『浄土世界』という基本コンセプトで普遍的価値の証明をすることができるか、という問題についても考えてみた。平泉は『浄土空間』に尽きるのか否か、わたしたちは、この疑問を解かなければならない。「序文」より
セブンネットショッピング