オイストラフ最晩年の名録音がオリジナルマスターからの2017年最新リマスタリングで蘇る!世界初SACD化。優秀録音盤20世紀最高のヴァイオリニストの1人、旧ソ連の巨匠ダヴィッド・オイストラフ(1908~1974)が、亡くなる2年前にウィーンでパウル・バドゥラ=スコダ(1927~)と録音した、名盤のほまれ高いモーツァルトのヴァイオリン・ソナタ集です。オイストラフの西側デビューは第2次世界大戦と、その後の東西対立といった国際情勢によって遅れ、初めてパリに出たのが1953年、45歳の時でした。その後、ロンドン・デビューが1954年、東京とニューヨークへのデビューが1955年(東京公演の成功と、社会現象ともなった人気ぶりは語り草になっています)、そしてウィーンへのデビューは1961年でした。このウィーン初登場時に、オイストラフはドブリンガー楽器店でモーツァルトに関するバドゥラ=スコダの著作を購入しています。旧ソ連という閉ざされた世界で演奏活動を行っていたオイストラフが、モーツァルト解釈において20歳も年下のバドゥラ=スコダに一目置いていたことが伺われるエピソードと言えるでしょう。そして11年後に共演、録音したのが、このモーツァルトなのです。ここでのオイストラフは、彼の1950年代の録音に見られるような甘美で線の太い音を用いていません。その音はずっと洗練され、微妙な美しさをたたえたもので、ピアノとの音量バランスも極上に保たれ、その造形は古典派の音楽にふさわしく端正で、音楽は軽やかなリズムとともにすがすがしく流れてゆきます。オイストラフが持前の安定しきった技巧と多彩で豊かな音色を、作品の様式感の中で生かし切っていることが実感されます。これにはモーツァルトが活躍した街、ウィーンで生まれ、作曲者と音楽的土壌を同じくするバドゥラ=スコダの研究成果や助言が、かなり反映しているようです。一方のバドゥラ=スコダも、オイストラフの個人様式を配慮して、時代楽器ではなく音量も響きも豊かなモダン・ピアノを用いつつ、時代楽器のような粒立ちの良い、歯切れの良い音を作り出しています。オイストラフの美音とバドゥラ=スコダの美音が、作品にふさわしい様式感を伴ってぶつかり合い、淀みなく流れてゆく美しさ、そして、その美しさを捉えきった清々しいアナログ録音は、数多いモダン楽器によるモーツァルトのヴァイオリン・ソナタ録音の中でも、今なお最高位を占めるものと言えるでしょう。この後も、オイストラフとバドゥラ=スコダは共演を続け、1974年に現役のまま世を去ったオイストラフの、結果として最後のリサイタルとなった(同年5月29日)共演者もバドゥラ=スコダでした。この録音は、二人の大家の友情の記念として、そして素晴らしい名演・名録音の記録として、永遠に聴き継がれてゆくことでしょう。今回のSACD復刻では、オリジナル・アナログ・マスターテープから高品位でデジタル化された音源より、新規でマスタリングを行いました。瑞々しい音を余すところなく伝えるSACDの高精細な音質をお楽しみいただけます。また、CD層も今回の発売のために新規マスタリングを実施しました。尚、今回の第4弾は、計3タイトルを発売いたします。
TOWER RECORDS ONLINE