家族の運命をねじ曲げた臨界事故……。JCO近くで著者のご主人が経営していた学習塾は、事故によって生徒数が激減したため閉鎖に追いやられ、借金を抱えたまま、ご主人は慣れないタクシー運転手に転じることを余儀なくされました。 東海村に日本原子力研究所が設立された半世紀前、義父が研究者としてその創成期に関わった、原子力を誇りとしていた原研家族″に降りかかった臨界事故。 事故は何ゆえに起きたか。「不安の海の中で??JCO臨界事故と中絶の記録」で01年、第5回報知ドキュメント大賞優秀賞を受賞した若き母親が、軌道に乗りかけた生活をおとしめた臨界事故の正体を求めて駆け抜けた3年余の壮絶な記録が、ここにあります。 公判で知った大内・篠原両氏の妻たちの証言、安全審査の杜撰さ……。本年3月3日、JCOと6名の被告が水戸地裁で裁かれましたが、著者は、裁かれるべきはこの6名であるのか?と佇みます。 原子力を論ずることがタブー視された原子力の村″は、97年動燃爆発炎上事故に続いて起こったわが国最悪のJCO臨界事故によって、いま、静かに変わり始めたといわれていますが、その足音が本書からも確かに聞こえてきます。 ぜひ、ご購読いただければ有難く存じます。
セブンネットショッピング