この度、五島健司さんが桜の写真集を出版されることになった。この写真集を出版するきっかけになったのは、もう二十年も前の黄色な昔に制作された、映画「遠野物語」のラストシーンの桜花に魅せられてからだという。それは気が狂れてしまった主人公小夜が、妖しく満開に咲く夜桜の古木に寄り添い、いとおしく赤児を抱きながら立ちすくんでいるというシーンであった。スクリーンいっぱいの桜花はこの映画の圧巻でもあった。五島さんは二十年という永い年月の間、ただひたすら桜ばかりを撮り続けたという。一つの事にこれだけの情熱と執念ともいえるものを、いったい五島健司という男は何から得ることができたのだろうか。この度の写真集は、きっとそのことを的確に語るであろう。
楽天Books