従来、中世盛期フランスは中央集権化による王権の成長期として語られてきたが、地方では王権とは異なる様々な地域権力が活発に活動していた。本書は12‐13世紀の北フランス・ピカルディ地方に位置した一地域権力であるポンティウ伯領について、一次史料である『ポンティウ伯文書集』を用い、伯の側近構成・文書行政・財産と運営・裁判権・都市自治体との関係という5つの側面から考察する。この検討を通じて、ポンティウ伯が大領邦君主や王権のような領域的統治を志向していたことを明らかにする。序章 中世フランスの国家と社会―中規模領邦をめぐって第1章 ポンティウ伯文書と文書局―伯の文書行政第2章 ポンティウ伯の統治と側近たち第3章 ポンティウ伯権力と所有―ポンティウ伯のdominium第4章 ポンティウ伯の上級裁判権第5章 ポンティウ伯とコミューン結論中世盛期のフランス史というと、教科書などではもっぱらフランス王権の成長期・中央集権化の時期として語られがちである。しかし地方にも目を向けてみると、王権とは異なる様々な地域権力が活発に活動していたことが見えてくる。本書は12-13世紀の北フランス・ピカルディ地方に位置した一地域権力であるポンティウ伯領のなりたちや統治の仕方について明らかにすることを試みるものである。研究の材料として『ポンティウ伯文書集』という、ポンティウ伯が発給した文書史料を用いて、ポンティウ伯の側近構成、伯の文書行政、伯の財産とその運営、伯の裁判権、伯と都市自治体との関係という5つの側面から、ポンティウ伯の伯領の統治について検討を行う。その結果、ポンティウ伯の伯領において公権力の担い手として振る舞おうという強い意欲が確認され、他方で、多様な社会集団、諸権力の並存するポンティウ伯の統治の特徴も認められ
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