「世の中はいろんな立場、いろんな考え方が入り混じって、とても複雑にできてるんだ。その中を君は生きて行かねばならぬ、やっと君は山道にさしかかったんだ。その道のりを苦しいと思うか、楽しいとみるかも、自分の感じ方次第だ。」―悩み多き年頃を迎えた少年への44の手紙を通じて語られる若者への熱いメッセージ。サンタクロースにもらったプレゼントのこと。「君たちはどう生きるか」の真似みたいだけど、「走れメロス」のことをいう前にいっておきたい「先入観」のこと。そして、犯人を投票で探そうとしたはなし。映画「運命の饗宴」の中の、同窓会で財布がなくなったはなし。先入観をなくして、ゼロから考えると、本当のものが見えてくるということ。先入観をなくして「走れメロス」のことを考えるために、もう一度横道にそれて、浜田広介の「ないた赤おに」を読んでみよう。鬼とはなにか、ゼロから考えてみる必要がありそうだ。鬼のモデルは人間だった。鬼という敵をつくることによって、もう一方の人間の安全をはかろうとしたようすが見えると、馬場あき子はいう。この手紙のなかにニタッと笑えるしかけもある。「走れメロス」とシラーの詩。「必ず、邪知暴虐の王を除かねばならぬと決意した」メロスと、たまたまこれを書いている今、つまり1986・2・25のフィリピンのアキノ政権の樹立と無血革命のことメロスは、友に一切の事情を語った。セリヌンティウスは無言でうなずいた。甘んじて人質になる。そして縄をうたれる。メロスは出発する。初夏、おりしも満点の星である。妹の結婚式を無事すませたメロスはシラクサの町にとってかえす。しかし河は氾濫し、行く手をふさぐ兵士もいる。その中をメロスは黒い風のように走る。そして、危機一髪メロスは刑場に突入する。シェイクスピアの戯曲「ヴェニ
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