序章 小麦パンの地位第1章 自由貿易論における穀物―アダム・スミス第2章 経済発展における地代―トマス・ロバート・マルサス第3章 穀物の価値と経済発展―デイヴィッド・リカードウ第4章 大陸諸国の穀物輸出能力と国内農業改良第5章 食料安全保障と帝国第6章 穀物輸入の急増と経済学における「限界革命」第7章 穀物自給率の低落と関税改革論争第8章 第一次世界大戦における穀物第9章 第二次世界大戦における穀物第10章 EC加盟と小麦の自給化終章 穀物安定供給スミスの『国富論』から20世紀末までの200年に及ぶイギリスにおける穀物(小麦)の生産と消費に関する変遷を通して,経済学と経済政策の歴史的展開を考察,さらに穀物を巡る国際関係の推移を解明した画期的業績。スミスやリカードウ,マルサス,ミルなど多くの理論家は農業を前提に地代,利潤,価値の問題を論じてきたが,農業の位置づけが変わるとともにジェボンズやマーシャルなどにより新たな経済学的展開がなされた。産業革命による工業化と資本主義的生産を展開したイギリスは,1770-1870年を「小麦パンの時代」と呼び,1世紀の間にパンの消費は4倍以上,人口は850万から2600万人へと3倍に増えた。自由貿易や植民地への資本と労働の投下で,20世紀初頭には食料の外国依存と農業人口の減少が極限にまで進む。第二次世界大戦後に経済力が低下するなか農業の強化を図り,EC加盟を通じて穀物など主要食糧の自給化を実現した。しかし生活の向上による食生活の変化と自給化に伴うコスト増を背景に,環境問題や栽培品種の限定,アグリビジネスによる流通支配など新たな課題に直面し,国民の生活基盤を支える食料政策は構造的な転換に見舞われた。これらの分析を通して,現代世界の食糧問題や食料安全保障など,読者は食に関わる多
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