日本らしい繊細な手仕事を感じる有松絞り。海外ではタイダイ染めが近いもので、どちらも全てが一点ものの二つとして同じものが存在しない染物。江戸時代から続く日本の伝統工芸の一つ、有松鳴海絞りは、愛知県の東海道が近い松林の生い茂る土地に、当時移り住んできた農民たちが生計を立てるために何かできないかと始めた染色です。有松絞りといえば、風情豊かな夏の浴衣をイメ-ジしますが、今日まで広がるきっかけになったのは、日用品の手ぬぐいです。ハンカチやタオルのような手ぬぐいは、有松のそばを通る東海道を行き来する人にとっても旅の必需品だったわけですが、その文様を施された手ぬぐいは、実用だけでなくお土産品としても人気になって持ち帰られたそうです。有松絞りは、暮らしに不向きと思われた土地に移住した人々が生きるために知恵を出し、国の伝統的工芸品、世界で「SHIBORI」として高い評価されるまでになる不遇の境遇を逆転させた人たちの物語でもあります。「有松鳴海絞り」を纏う一人一芸と言われ、一枚の布に広がるその手業で生.
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