異教徒の侵略に抗して戦い、奮迅の活躍をなすのがムスリム騎士の理想であった。それを体現したアイユーブ朝の始祖・サラディン。十字軍との覇権争いに終止符を打ち聖地エルサレムを奪還したイスラームの「英雄」は、ヨーロッパにおいても畏敬の念をもって描かれた。その生涯を追うことで、聖人化された英雄の、人間としての姿に迫った本格的評伝。プロローグ―サラディンの生きた時代第1章 修行時代(誕生;カリフ権力の衰退と十字軍の侵攻;少年サラディン;ヌール・アッディーンとの出会い;エジプト遠征)第2章 エジプトの若きスルタン(アイユーブ朝の創設;バイナル・カスラインの戦い;サラディンの補佐役たち;イエメン征服の謎;シリアへの進出;新体制の確立)第3章 カイロからエルサレムへ(エジプト経済の繁栄;聖戦へ向けて;エルサレム奪回;アッカーをめぐる攻防;サラディンの死)エピローグ―サラディン以後マムルーク朝のバイバルスとともに、イスラーム史上の英雄と称されるアイユーブ朝のサラディン。アラブと十字軍の50年以上にわたる覇権争いに終止符を打ち、十字軍から聖地エルサレムを奪回した「イスラーム世界の英雄」として知られる彼は、同時代のアラビア語史料や伝説に「アラブ騎士道の達人」「慈悲深い高潔な人物」と謳われ、ヨーロッパでも智者、果敢な騎士、寛大な性格の人物と評されました。アラブ側は異教徒と勇敢に戦った英雄として、ヨーロッパ側はアラブ騎士道の体現者として、サラディンを描きつづけています。そのような伝説に彩られた人物の実像とはどのようなものだったのでしょうか。本書は、サラディンが、どのような政治・経済・社会状況にあって、どのように考え、どのように行動したかを明らかにします。さらに、伝説と事実を峻別したうえで、架空の伝説も人
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