結婚の日の早朝、諒子は机の引出しに仕舞っていた宝物、彼から貰った貝殻を家の玄関の大きな鉢植えの土の上に、一個ずつ数えながら並べた。最後の別れの気持ちを込めて。数が増えるごと、彼は諒子の手元から消えて行くのだった。新婚旅行に出発する船の甲板で、見送りの人々に満面の笑顔で手を振りながら、心の中で“澤井さんさようなら”と呟くと、ぐっとこみ上げるものがあり、諒子はハンカチで目頭を押さえた。それは過去への完全な決別の涙だった。弱視というハンディを持ちながらも明るく生きる敦子。その姿を描く「夜昼トンネル」、すれ違いと偶然の中で結婚した諒子。真実と現実の中での葛藤と愛を描く「残照」。叙情性あふれる作品2編収録。
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