JPY ¥1,634
彼女は、自分の命がそう長くは続かぬのではないかと、薄々感じていた。窓辺に置かれ、長年ともに過ごしてきた油灯さえ、近ごろは理由もなく消えることが多い。油を注ぎ足しても、炎は心細く揺れ、いつ途絶えてもおかしくない。そんな折、彼女は幾度も同じ夢を見る。紫藤の花が咲き満ちる藤棚の下。幼い自分が、短い脚をぶらぶらと揺らしながら座っている。白くふくよかで、饅頭のような乳母が、穏やかな声で食事を口に運んでくれる。??もし、本当にあの頃へ戻ることができたなら。あの時見過ごしたもの、守れなかったもの。その人生は、果たしてどれほど違う道を辿ったのだろうか。  BOOK☆WALKER