ここ10年ぐらいの間に、「音」に対する関心が高まってきた。各地で、音環境デザインが試みられ、音名所や残したい音風景選定事業が行われている。音に関する環境教育に取り組むグループもある。「サウンドスケープ(音の風景)」という言葉も、知られるようになってきた。本書は、このような「音」を巡る様々な動向を、「音の生態学」という枠組みで総括したものである。「音の生態学」が対象とする「音」は、単なる空間の物理的な振動を指すのではない。「音の生態学」は、人間が聞いている音を対象とする。愛着を覚える音もあれば、忌み嫌う音もある。日常生活の中の音もあれば、記憶の中の音もある。文芸に表現された音もあれば、映像に組み合わされた音もある。自然の音、音楽、街にあふれる騒音、それらすべてが「音の生態学」の対象となる。そんな「音」を、体系的に論じるのが、本書である。
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