天平宝字八年(764)九月、孝謙上皇によって御璽と駅鈴を奪取された藤原仲麻呂(恵美押勝)は失脚・滅亡し、ここに仲麻呂政権は終焉を迎える。最終的には皇権者との対立によって滅び去ったが、そのことはとりもなおさず、仲麻呂政権が「天皇専権」と相容れないものであったことーつまり、真の意味で「貴族専権」であったことを示唆する。それでは、仲麻呂が目指した「貴族専権」国家とは、具体的にはいかなるものであったのだろうか。本書では、(1)仲麻呂と孝謙上皇、淳仁天皇、(2)仲麻呂と光明皇后、(3)仲麻呂と官人、(4)仲麻呂の民政、(5)仲麻呂と仏教、(6)仲麻呂と神祇の各視点から仲麻呂政権の特質を明らかにし、奈良朝における「天皇専権」と「貴族専権」のせめぎ合いの実相に迫る。復刊にあたり、史料の釈読を一部改めたほか、補註、旧版刊行後の研究動向を書き下ろしで収録。
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