ジョナサン・バリー/クリストファ・ブルックス 昭和堂(京都)
七本の論文が収められた本書では、近世イングランド社会(16〜18世紀)の分析にあたり、三分法の立場にたって、同時代人がmiddling sort(本訳書では「中流層」という訳語を用いた)として認識していた人びとに対する、多彩な角度からのアプローチが試みられている。中産階級なるものがイングランド(イギリス)社会で成立するのは、産業革命後の19世紀になってからのことであって、それ以前、すなわち近世イングランド社会は、エリート民衆、あるいはジェントルマンとノン・ジェントルマン、あるいは富める者と貧しき者というように、基本的に二分法によって分析すべきだとする立場たとえば近世において階級と呼べるのはジェントルマン階級だけであって、ノン・ジェントルマンはジェントルマンの家父長的支配のもとでおよそばらばらの存在にすぎなかったとするピーター・ラスレットの一階級社会論や、民衆文化の自律性ならびに民衆文化とエリート(ジェントルマン)文化の相互作用を強調するE・P・トムソンの議論ーへの批判が、この論文集の基本的スタンスである。
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