特発性/遺伝性肺動脈性肺高血圧症(I/HPAP)については、1973年に第1回WHO肺高血圧症国際会議が開催され、若年女性が罹患し、中間生存期間2.8年と極めて予後不良の疾患とされた。本症に対するエポプロテノール持続静注療法および経口肺血管拡張薬の発展に伴い、その予後の飛躍的な改善がみられるが、初期併用療法が普及した日本の専門施設におけるI/HPAPの予後は極めて良好なことが報告されている。抗凝固療法のみでは予後不良とされてきた、慢性血栓塞栓性肺高血圧症(CTEPH)では、肺動脈内膜摘除術に加えて、日本においてその手技の改良によって普及したバルーン肺動脈拡張術(BPA)によって、非手術適応例の予後も改善した。一方、肺静脈閉塞症/肺毛細血管種症(PVOD/PCH)の予後は今なお不良で、肺移植が唯一の確実な治療である。これらは、厚生労働省の指定難病とされており、PAH、CTEPHはともに3000名を超える患者が登録されている。 2018年3月に肺高血圧症治療ガイドライン改訂版が公表され、海外のエビデンスと日本の現状を踏まえた推奨が記載された。同年2月には、ニースで第6回の肺高血圧症国際会議が開催され、12月にそのまとめが公表された。ニース会議における大きな変更点は、肺高血圧症の定義(安静時平均肺動脈圧≧25mm Hg以上)が、>20mm Hgと変更されたことである。さらに、PAHの遺伝子的素因、分子病態解明の進歩が報告され、リスク分類と治療指針が改訂された。左心疾患や呼吸器疾患に伴う肺高血圧症とPAHの鑑別、治療の現状について記載され、BPAの有効性が海外でも認められるようになった。 日本においては、もやもや病と関連するRNF213遺伝子異常が初めて報告され、日本人での解析の重要性が指摘されるようになった。CTEPHの病因として、TAFIとの関連が報告され、過剰発現によるCTEPH実験モデル
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