佐佐木信綱から水原紫苑まで、21世紀へ伝える絶唱100首の鑑賞。戦争、恋愛、社会、生死、自然…激動の時代をさまざまなテーマと方法で詠んだ歌人たち。短歌創作の手引きとして、20世紀の日本を知るための事典として、最適の一冊。一九二六(昭和1)ー四五(昭和20)(山の上にたてりて久し吾もまた一本の木の心地するかも(佐佐木信綱);年々にわが悲しみは深くしていよよ華やぐいのちなりけり(岡本かの子) ほか)一九四六(昭和21)ー五五(昭和30)(日本語は今も清しくあるらむと海渡り吾が帰り来にけり(小暮政次);兵たりしものさまよへる風の市マフラーをまきゐたり哀し(大野誠夫) ほか)一九五六(昭和31)ー六五(昭和40)(一本の樫の木やさしそのなかに血は立ったまま眠れるものを(寺山修司);ただ一人の束縛を待つと書きしより雲の分布は日々に美し(三国玲子) ほか)一九六六(昭和41)ー七五(昭和50)(冬ばれのひかりの中をひとり行くときに甲胄は鳴りひびきたり(玉城徹);他界より眺めてあらばしづかなる的となるべきゆふぐれの水(葛原妙子) ほか)一九七六(昭和51)ー八五(昭和60)(トレーラーに千個の南瓜と妻を積み霧に濡れつつ野をもどりきぬ(時田則雄);身を射すは若葉のしづく木莵のこゑいま抱かれなばにほひたつべし(藤井常世) ほか)一九八六(昭和61)ー九二(平成4)(「寒いね」と話しかければ「寒いね」と答える人のいるあたたかさ(俵万智);たぶんゆめのレプリカだから水滴のいっぱいついた刺草を抱く(加藤治郎) ほか)戦前の昭和から平成まで、激動した日本の時代と事象を短歌はどのように表現してきたか。21世紀へ伝える貴重な秀歌100首の鑑賞。
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