「恋の時間、結婚の時間の中では、美点も欠点も、可愛いところも困ったところも、崇高なところもずるいところも、余すところなくさらけだされてしまう。そこにそそられるのである」。文学を深掘りする著者が、12人の作家の生きた地に足を運んだ傑作ノンフィクション。裏事情を知ると、古典を再読したくなる!小林多喜二―恋と闘争近松秋江―「情痴」の人三浦綾子―「氷点」と夫婦のきずな中島敦―ぬくもりを求めて原民喜―「死と愛と孤独」の自画像鈴木しづ子―性と生のうたびと梶井基次郎―夭折作家の恋中城ふみ子―恋と死のうた寺田寅彦―三人の妻八木重吉―素朴なこころ宮柊二―戦場からの手紙吉野せい―相剋と和解『狂うひと―「死の棘」の妻・島尾ミホ』著者が見た、激しすぎる作家たち。恋の時間、結婚の時間、そして死までを深堀りし、作品に新たな光をあてる。(解説 永田和宏)目次1 小林多喜二――恋と闘争一度も関係をもたぬまま、借金を抱えた酌婦から身請けし、「闇があるから光がある」と恋文を送るほど愛したタキ。だが彼女は、自分は多喜二にふさわしくないと求婚を拒み、表に出なかった。若くして非業の死を遂げた作家と「永遠の恋人」。2 近松秋江――「情痴」の人愛欲の愚かさを描き尽くし、「情痴作家」と呼ばれた最後の文士。「あたしなどは人間の屑だ」。現代ならストーカーと呼ばれかねない女性への恋着を描き、正宗白鳥とは私娼を奪いあう。晩年に失明した秋江の棺に入れられた女性の写真とは。3 三浦綾子――「氷点」と夫婦のきずな敗戦の価値観の転換で、虚無に捉えられた綾子。二人の男性と婚約破棄。結核、そして自死の企て――絶望の果てで見出した光は、幼馴染みのクリスチャンの男性だった。彼もまた結核に倒れるが、その不思
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