戦間期(一八一八ー三七年ごろ)の文学にみられる"狂気"と"無意識"の表象を分析することによって、"脱近代"としてのモダニズムの様態を解き明かす。近・現代文学史における戦間期モダニズムの心理描写―"自然科学的心理観"と"心身"の観点から第1部 "自然科学的心理観"と"心身"の文学(明治期における"自然科学的心理観"と文学;"狂気"に関する戦間期以前の"科学"と文学;戦間期の"精神科学"と身体・無意識・病理)第2部 戦間期モダニズム文学と"狂気"の表象(モダニティとしての"狂気"の再発見―中村古峡作品及び『変態心理』記事を中心に;方法としての"狂人の一人称語り"―芥川龍之介「河童」;"人格"の異常と表現行為をめぐる物語―川端康成「或る詩風と画風」)第3部 モダニティとしての"無意識"と"心身"(他者の心理を"科学"的に"探偵"すること―江戸川乱歩「D坂の殺人事件」「心理試験」;"無意識"という機構、支配される自己―横光利一「機械」;「象徴」による無意識の表象―川端康成「水晶幻想」;時間と空間の中の"心身"―横光利一「時間」;物理的現象としての"心"―横光利一「雅歌」;脱近代・反理性としての戦間期モダニズム)理性の崩壊または損壊、すなわち「狂気」。人間心理の中の、意識せざる意識、すなわち「無意識」。戦間期の文学にみられる狂気と無意識の表象を分析することによって、脱近代としてのモダニズムの様態を解き明かす。
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