人類には二種類のモラルの体系がある。ひとつは商取引など他者との協力関係を築くのに必要とされる「市場の倫理」であり、もうひとつは集団の秩序を維持するための「統治の倫理」だ。この二つの道徳が混同されたとき、国家から企業まで、あらゆる組織に不正が生じる。本書では、プラトン、老子をはじめ、古今東西の道徳律をこうした相対立する原理に分類し、いつ、どういう場合に、どちらの立場を優先させるべきなのか、具体的な問題に即して考察する。人間社会をむしばむ腐敗の根をあざやかに読み解いた、記念碑的名著。第一回会合・アームブラスターからの呼び出し―蔓延する道徳的混乱を憂う第二回会合・二組の矛盾する道徳律―市場の道徳と統治の道徳ケート、市場の道徳を論ず―市場倫理の歴史的起源なぜ二組の道徳律か?―分類の根拠を問う第三回会合・ジャスパーとケート、統治の道徳を論ず―統治倫理の歴史的起源取引、占取、その混合の怪物―領土・国家をめぐる取引と統治型に収まらない場合―医療、法律、農業、芸術第四回会合・統治者気質・商人気質―物事は視点によって見方が変わるアームブラスター、道徳のシステム的腐敗を論ず―何が失われたのか第五回会合・倫理体系に沿った発明・工夫―新たな発見と共生の可能性ホーテンス、身分固定と倫理選択を対比―二つの道徳体系を区別し、自覚的に選択する方法の落とし穴―システムを保持し続けることの限界ホーテンス、倫理選択を擁護―完全なる人間性に至る道計画とシャンパン―文明のために環境破壊、汚職、犯罪の増加…。現代社会を蝕む問題をどう解決するか?二つの相対立する倫理を手がかりに、都市論の第一人者が鋭く切り込む。
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