太平記よみの語りは、中世・近世を通じて人びとの意識に浸透し、天皇をめぐる二つの物語を形成する。その語りのなかで、楠正成は忠臣と異形の者という異なる相貌を見せ、いつしか既存のモラル、イデオロギーを掘り崩してゆく。物語として共有される歴史が、新たな現実をつむぎだすダイナミズムを究明し、戦記物語研究の画期となった秀作、待望の文庫化。第1章 太平記の生成第2章 もう一つの「太平記」第3章 天皇をめぐる二つの物語第4章 楠合戦の論理第5章 近世の天皇制第6章 楠正成という隠喩第7章 『大日本史』の方法第8章 正統論から国体論へ第9章 歴史という物語太平記よみの語りは、中世・近世を通じて人びとの意識に浸透し、天皇をめぐる2つの物語を形成する。その語りのなかで、楠正成は忠臣と異形の者という異なる相貌を見せ、いつしか既存のモラル、イデオロギーを掘り崩してゆく。物語として共有される歴史が、新たな現実をつむぎだすダイナミズムを究明し、戦記物語研究の画期となった秀作、待望の文庫化。これほど、読むたびに知的興奮を覚えさせられる本は、めったにない。10年前、兵藤さんからこの本を贈られ、一気に読んでそのスリリングな議論展開のとりこになって以来、『太平記<よみ>の可能性』は、文字通り私の座右の書になった。そのときどきの私の関心に応じて、さまざまな読み方ができ、そのたびに啓発される。この本自体、豊かな<よみ>の可能性にみちているのだ。――<川田順造「解説」より>〔原本:1995年刊行の講談社選書メチエ〕第1章 太平記の生成第2章 もう1つの「太平記」第3章 天皇をめぐる2つの物語第4章 楠合戦の論理第5章 近世の天皇制第6章 楠正成という隠喩(メタファー)第7章 『大日本史』の方法第8章 正統論から国体論へ第9章 歴史という物語
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