紙の違い、サイズの種類。絵師の署名の有無、書き方の違い。描かれた人物の興行記録との矛盾、吉原細見との合致。浮世絵研究とは、紙の「折り跡」が謎を深め、制作年の一年の差が、謎を解く鍵になる世界。そこをちらりと覗いてみれば、眺めるだけでは決して見えない浮世絵版画文化、そして江戸という時代の全体が立ち上がる。第1章 紙と判型の謎(鈴木春信の死と判型;歌川広重の花鳥画の大きさ)第2章 描かれた謎(豆男春画の謎;二種類の右図の謎;写楽の見立と創造;広重は東海道を歩いたか)第3章 どこまでが浮世絵か(包紙―浮世絵はどのように売られたか;絵半切―江戸時代の絵入用箋;絵半切的絵本、絵入折絵本、特性用箋;千社札文化の謎)第4章 美術史の外側から読む(春の清水寺の謎―文学・歌舞伎と浮世絵版画;パリ万博の浮世絵画帖―浮世絵師の住居と報酬)終章 浮世絵研究をしたくなった方へ◎大判、中判、間判、短冊……浮世絵のサイズはどう決まる?◎紙が貴重な時代の包紙……浮世絵を買ったらどう持ち帰る?◎役者絵と興行記録の違い……絵師は舞台を見て描いたのか?◎浮世絵師という仕事……収入、住まい、仕事の量とスピード◎贋作・剽窃・続編……江戸時代の認識はどう違う?――ほか、「そういえば知らない」浮世絵の謎を解き明かす!浮世絵は誰もが身近に感じる日本美術の代表。欧米での人気もうなぎのぼり。が、こんなにわかっていないことが多かったとは。 そもそも洋画や日本画さえ西洋の美術をモデルに明治時代に作り出された。浮世絵の全盛期に「美術」という言葉はなかった。私たちが浮世絵を美術館で鑑賞するのと違い、もとは私的な楽しみのため市井で売り買いされるものだった。 そんなことは知っていると言うかもしれない。ところが、買い手が浮世絵をどのように持ち
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