彼女を語るとき、ひとはなぜか取り乱してしまう。まるでついに己のみすぼらしい夢を暴露されてしまったかのように。芸術を愛し理解するとは、いったいどういうことなのか?天才の妻とは、いかなる存在であればよかったのか?二百年にわたる「極端な評価」の数々を読み解き、虚心に真の姿を検証する試み。序章 琥珀のなかの「蝿」第1章 モーツァルト家vs.ウェーバー家第2章 コンスタンツェという女性第3章 「理想のモーツァルト伝」のために第4章 加速する「悪妻」イメージ第5章 伝説は覆されたか?第6章 日出ずる国のコンスタンツェ終章 彼女を語るとき、ひとは…音楽学者にして熱烈なモーツァルト崇拝者でもあったアルフレート・アインシュタイン(1880ー1952)はモーツァルトの妻・コンスタンツェを、はっきりと「琥珀のなかの蠅」呼ばわりしました。ご馳走と見ればすぐさまそれにたかりにくる醜く、汚らわしく、うっとうしい存在。天才の妻として、なぜこれほどまでに、コンスタンツェは否定的なまなざしで受けとめられねばならなかったのか?音楽学者にして熱烈なモーツァルト崇拝者でもあったアルフレート・アインシュタイン(1880ー1952)はモーツァルトの妻・コンスタンツェを、はっきりと「琥珀のなかの蠅」呼ばわりしました。ご馳走と見ればすぐさまそれにたかりにくる醜く、汚らわしく、うっとうしい存在。そのような存在が、琥珀のようなモーツァルトと密接にかかわったからこそ、彼女は人びとの記憶に残るようになったのだというきわめて否定的な見解が、彼の言にはあらわれています。 なぜこれほどまでに、コンスタンツェは否定的なまなざしで受けとめられてきたのか? この疑問を解くべく、本書ではまず、コンスタンツェの実家であるウェーバー家、および彼女の生涯を概観します
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