16歳年上の兄カール・ハインツは、ヒトラーユーゲントの教育に染まり、武装親衛隊のエリート部隊である「髑髏師団」に入隊する。ハリコフ攻防戦やクルスクの戦いにも参加するが、戦闘中に両足に重傷を負い、切断を余儀なくされ、ウクライナの野戦病院で息を引き取った。第一次世界大戦に自ら志願して従軍し、第二次世界大戦でも戦った父は、兄を誇りに思い、その死を深く悔やむ。いっぽう母は、息子が戦争犯罪に加担しなかったと固く信じながら、戦地から届いた兄の遺品を、半世紀にわたり化粧台に入れて大切に保管していた。兄より年長の姉は、娘である自分が兄ほど父に愛されなかったことを自覚しつつ、それでもやはり自分は父に愛されていたと信じようとする。兄の遺した日記や手紙を読みながら、著者は、戦争の記憶をほとんどもたない自身の半生、さらには両親や姉の人生を振り返る。ナチズムと国家による暴力、戦時下の小市民の生活について、短いテクストの集積で語りつつ、読む者に深い問いを投げかける。兄の人生から浮かび上がる戦争と家族の物語 ナチズムに疑いをもつことなく戦地に赴き、19歳で命を落とした兄。弟である著者が、残された日記や手紙から兄の人生を再構成しながら、「戦争」とは何か、「家族」とは何かを問いかける意欲作。 16歳年上の兄はヒトラーユーゲントの教育に染まり、武装親衛隊の「髑髏師団」に入隊、ウクライナで戦死した。戦後民主主義の教育を受けて育った第一世代である著者は、兄の遺した日記や手紙を読みながら、戦争の記憶をほとんどもたない自身の半生、両親や姉の人生を振り返る。そしてナチズムと国家による暴力、戦時下の小市民の生活について、短いテクストの集積で語りつつ、読む者に深い問いを投げかける。 わずかな手がかりをもとに、亡き兄の人生について
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