これまで、国有企業改革は企業自主権の拡大を中心とした「利潤留保制」、「利改税」に始まり、続いて所有権と経営権の分離を目指した「経営請負責任制」がおこなわれ、一定の効果を収めた。だが、これら一連の改革では、企業は依然としてソフトな予算制約下にあり、企業の自主経営、損益自己負担のメカニズムは形成されなかった。こうしたなかで、国有企業改革は、企業の「法人財産権」を明確にする「現代企業制度」の確立と戦略的改組へと方向転換した。「現代企業制度」下では、企業には「法人財産権」が与えられ、それによって国家と企業の関係は従来の所有権と経営権の関係から出資者(国家)と法人(企業)の関係に転換した。だが、社会保障制度の未整備は国有企業の「現代企業制度」の確立と戦略的改組の阻害要因となり、社会保障制度の更なる整備が求められた。そこで、社会保障制度の改革がおこなわれた。では、こうした方向転換によって、国有企業の効率化、活性化は実現されるのであろうか。本書は、それを究明することを意図したものである。
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