筆者は住教育を研究テーマとして、家庭科教育における住居領域の学習のあり方に目を向けていた。形式的には洋風の住まいを志向しながらも、洋風の起居様式への理解が不十分なために、かえって家庭内の室内光景を貧困化させているごく普通の家庭の住まい方は、豊かさを実感させる要素が何か欠如しているという疑問をもち続けていた。新しい生活様式は、教え、教えられる関係の中で培われ、さらに継承を重ねて秩序が整うという、いわば伝承的な教育行為の中で方向性が発見できるのではないか。研究を進めるうち、わが国に洋風生活を直接持ち込んだ宣教師の伝道活動にしだいに引きつけられるようになった。本書は、宣教師と洋風生活浸透を論じた一連の研究をまとめたものである。
楽天Books