父方の曾祖父として阪谷朗廬(儒者)、渋沢栄一(実業家)、母方としては三島通庸(県令、警視総監)、四条隆謌(公家、鎮台司令官)を持つ著者は、自家の系譜を辿ることが、即、近代日本の夜明けを検証できるという稀有なる位置にいる。その筆致は、きわめて客観的、事実提示的であり、近親者のみが語りうる微妙な心理過程の推察をふくむ。ここに描かれる官界・実業界・学界に綺羅星のごとき人材を輩出してきた"華麗なる一族"は実にノーブレス・オブリージュそのものを体現するといっても過言ではない。いま学ぶべきは、なによりも公正を重んずる強い信念ではないのか。本書を通して、もはや失われたかに見える日本人の美質、ここにありと実感できる貴重な一冊である。1 四人の曾祖父に関するノートから(阪谷朗廬;渋沢栄一 奇縁―三島通庸・阪谷朗廬との出会い ほか)2 二代の因縁(一)―広島を舞台として(曾祖父朗廬(広島藩政顧問)と祖父芳郎(広島大本営附大蔵省主計官))3 二人の祖父の若き日(阪谷芳郎―「大学の阿嬢」の自信;三島弥太郎―「川島武男」の手紙)4 二代の因縁(二)―北京を舞台として(祖父芳郎(中国幣制改革顧問)と父希一(中国聯合準備銀行顧問))5 父・阪谷希一の生きた道(父への追憶;中国に賭けた夢―父の歩んだ道)自家の系譜を辿れば、近代日本の夜明けを検証できるという稀有な位置にいる著者が、官界・実業界・学界に綺羅星のごとき人材を輩出してきた"華麗なる一族"の歩みを綴る。現代史への独自の寄与をなす貴重な証言。
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