『それから』の三千代の顔色は、なぜ赤くなったり蒼くなったりするのか。『門』の宗助が取り戻したかったものとは。『心』の三人にはなぜ名前がないのか。『吾輩』が鼠を取らないと決心した訳は、そして迷亭はなぜ法螺ばかり吹くのか。―百年後に残るのは自分のみと記した漱石に応えて、全く新しい読みを展開する文学批評の冒険。モナ・リザと吸血鬼―『それから』を循環する血と金(「宿命の女;那美という形象;三千代の顔色;スパーマティック・エコノミー;白百合の香を嗅ぐ;禁じられた男性間エロス;神経衰弱と変質論;自慰の問題の核心;夢の中で逢う;愛するのは心か脳か)エロスの変容―『門』のホモソーシャルな欲望(身体の近代化;泥棒のモチーフ;喪われた絆を求めて;宗助が盗んだもの;夜の冒険者たち;落魄の予感;他者としての女;現在を呪う過去)もう一つの聖書物語―『心』における血の盟約(鮮烈な赤;なぜキリスト教なのか;血のメタファーの変転;ワイルドの「イエス論」;三人には名前がない;室内空間の構造;三角関係の解剖学;童話「漁師とその魂」;転倒する主体と客体;同性愛エロスの発動;Kの「復活」;名辞の彼方へ)作家の誕生―『吾輩は猫である』の虚と実(講義と実作の同時進行;苦沙弥の写生画はなぜ失敗したか;固有名と虚構の逆説;滑稽と諷刺の源泉;分身としての苦沙弥と迷亭;虚構とリアルの関係;危うく名付けられかけた猫;なぜ鼠を取らないのか;ファルスとしての博士号;鉄の男と山の芋;寒月の真意と両義性;禿を隠す女たち;衣服という記号;古井武右衛門の艶書事件;夏目漱石の誕生)『それから』の三千代の顔色は、なぜ赤くなったり蒼くなったりするのか。『門』の宗助が取り戻したかったものとは。『心』の三人にはなぜ名前がないのか。『吾輩』が鼠を取らな
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