漢詩文は、幕末・明治期において我が国における主要な文学様式の一つであり、漢詩人たちを中心に巨大な文化圏を形成していた。近世期以降、蓄積された詩学の伝統のなかでの技術的成熟、近代という新たな社会がもたらす環境の変化、様々な要素が複雑に絡み合うこの時期の漢文学の動向を、数多くの新資料を用いて読み解く。第1部 幕末・明治期の社会と漢詩文文化(漢文による歴史人物批評―幕末昌平黌関係者の作品を中心に;明治初期の漢詩と結社―旧雨社をめぐって ほか)第2部 幕末・明治初期における漢詩の潮流と漢詩壇の動向(性霊論以降の漢詩世界―近世後期の日本漢詩をどう捉えるか;幕末京坂の漢詩壇―広瀬旭荘・柴秋村・河野鉄兜 ほか)第3部 森槐南と新世代の漢詩人たち(幕末・明治初期の艶体詩―森春涛・槐南一派の詩風をめぐって;漢詩における明治調―森槐南と国分青〓(がい) ほか)第4部 野口寧斎の生涯と文学(野口家一族と幕末の文人社会―寧斎の祖父良陽・父松陽について;野口寧斎の前半生 ほか)変化の時代に漢文学はどう対峙したか。天保末年頃から明治後期までの日本漢文学の動向について、関連する江戸後期以降の漢文学の潮流や、明治期の他ジャンルの文芸の状況をも視野に入れつつ、特に漢詩を中心に考察。
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