スポーツを論じるには二つの語り方がある。一つはアスリートの身体に焦点を当て、どのスポーツにも通じるようなボディとマインドのコントロールを中心に語る方法。今までのスポーツの論じられ方と言えば、大部分がこれだった。もう一つは、アスリートの身体を取り巻く「環境」に焦点を当てる語り方。例えば、陸上選手にしか語れない「地面」、水泳選手にしか語れない「水」を中心化する語り方である。本書では「スポーツの環境」に焦点を当て、生態心理学で「アフォーダンス」と呼ばれる「環境」の意味に、第一人者である著者が、北京五輪に出場する"オグシオ"潮田をはじめアスリート16人のインタビューを通じて肉薄する。エリア―身体の延長しているところ、一瞬で知覚する広さ(潮田玲子・バドミントン―空間を20分割して、シャトルを打つ!;名波浩・サッカー―ゴールへの完璧なパスコースが光り輝く;松下浩二・卓球―騙しあいの格闘技…卓球競技の本質)地面―疾走を支える外部エンジン(朝原宣治・100m陸上―100mを10秒台で走るとはどういうことか;鈴木亜久里・F1―F1ドライバーが見ている時速300kmの世界;堀井学・スピードスケート―スケート選手は氷をどう捉えているのか;皆川賢太郎・アルペンスキー―ポールは"縦への落下"でクリアする)空気―情報の埋め込まれた周囲(鹿島丈博・体操―宙返り、離れ技、高難度…体操競技の本質;澤野大地・棒高跳び―コンディションのいい日はポールが柔らかい;船木和喜・スキー・ジャンプ―ジャンプは、飛ばずに「風」に乗る)水―硬軟、形、千変万化の環境(寺内健・飛び板飛び込み―踏み切った瞬間、「入水ルート」が見えてくる;武田大作・ボート競技―水と喧嘩せずにボートに従う;武田美保・シンクロナイズド・スイミング―水面の
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