1 暗渠 その昏さ2 楽園の瑕3 虚ろな祠4 地獄抄5 路の涯てるところ6 ruin of a fire7 此岸から「詩」は目的ではない、手段である。「詩」はあくまでも義務として書かれた。私の死が永遠の義務であるのと同様のことだ。「詩」を書くために生きる必要などない。「詩」は、精神の内陸地から海へ向けて吹く風のようだ。大陸から空と海の境界線は見えない。水平線という了解はただ逃げてゆくばかりで、ひとに囚われることなどない。世界は存在しない、と言う者もある(マルクス・ガブリエル『なぜ世界は存在しないのか』)。「無限」のなかをただ、「有限」が永遠に行く。海と大陸との拮抗、きみが意味を怖れることなく、永遠を戦う有限であることを願う。そこには無限に繰り返された四十七億年の永遠が、ただ只管に打ち寄せるばかりだ。(本書「あとがき」より)膨大なる「索引」を巻末に従えた84篇の詩篇は、古い時代の戦争や厄災をなかったことにしようとする者たちへの呪詛のように、その他の廃墟として、現在に出現したに違いない。「晦渋」や「意味不明」の誹りを受けることも辞さない詩人の姿に、闇の中の光に照らされた「異形」を、われわれは読み解くことになるだろう。コロナ禍の世界で、読まれるべき詩集。
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