2000年代、認知言語学は「量的転回」と呼ばれる方法論的転換期を迎えた。内省による分析を基盤に据えながら、仮説の性質に応じて実験、コーパス、統計などを柔軟に組み合わせる実証的研究への羽ばたきである。空間移動表現の類型論、フレーム意味論、構文文法、メタファー・メトニミーという認知言語学の主要テーマにおける、そうしたアプローチの有効性を示す。巻頭言 実証性の高い言語研究を目指して1 空間移動表現(Beyond Path and Manner:From Child Language to Linguistic Typology;複数局面ルートの移動事象を描写する表現の類型論的分析;環状移動を表すタイ語動詞wonの語彙相)2 フレーム意味論・構文文法(言語研究における統計的モデリング;Mimetic 'Go'―Verbs in Japanese;中国語の原因型結果構文に対するフレーム・コンストラクション的アプローチ;Encyclopedic Knowledge in Denominal Verbs in English: A Case Study of Body‐Part Verbs)3 メタファー・メトニミー(When do Japanese Speakers Move Forward?;読字方向が時間概念の空間方向軸表象に与える影響;日本語比喩情報付与コーパスの作成と新聞における比喩実態調査の試み;外国語のメトニミー表現の解釈における他者の介入および他者との協同;受身標識の文法化に見られる規則性―主語に向けての移動から受身標識への文法化)2000年代、認知言語学は「量的転回」と呼ばれる方法論的転換期を迎えた。内省による分析を基盤に据えながら、仮説の性質に応じて実験、コーパス、統計など
Honya Club.com