多数の民族・言語・文化が重なり合った1920年代後半ー1945年の上海を、文学はどのように描いてきたのか。金子光晴・横光利一から池田克己・室伏クララまでの小説や詩、多彩な演目がかかった劇場空間や美術と文学との交響のドラマなど、その地に関わりを持った人びとの言説と記録から個別の体験を探り、文学・歴史研究における上海像の見直しを図る。一つ一つの小さな声が織りなす多層的な場としての上海を、度重なる現地踏査を踏まえて提示する。作品の舞台へ案内する詳細な上海地図、現地刊行の新聞・雑誌メディアの細目や記事情報も多数掲載。第1部 拡張する上海イメージ(井東憲・『上海夜話』ならびに『赤い魔窟と血の旗』小論―"朦朧都市"上海と"情報都市"上海のあわい;金子光晴・『どくろ杯』小論―どぶ泥のにおいの発見 ほか)第2部 戦時下における詩の行方(池田克己『上海雑草原』の"光"と"影"―小野十三郎の詩・評論を合わせ鏡として;草野心平「方々にゐる」に見る夢のきしみ ほか)第3部 国柄から流れ出る心(明朗上海に刺さった小さな棘―池田みち子の"上海もの"をめぐって;交わりと峻拒―林京子『ミッシェルの口紅』の世界 ほか)第4部 異民族並びに多言語空間との交渉(戦時上海における亡命ユダヤ人芸術家と日本近代文学との出会いをめぐる一考察―D.L.ブロッホと草野心平による共同詩画集『黄包車』を中心にして;D.L.ブロッホへのさらなる旅―ダッハウ・〓(こう)石・提籃橋 in 2004 ほか)第5部 現地新聞・雑誌メディアの中を走る力線(邦字新聞「大陸新報」瞥見;初期「大陸往来」の一瞥―含・一九四〇ー四一年度同誌掲載記事(作品)タイトル一覧 ほか)
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