舟のゐとく常盤の嫗小男の草子絵巻小男の草子絵巻 別本小おとこ[1]舟のゐとく(江戸前期写、二軸) 巻初で「世にすくれて 国土の重宝 万民のたすけとなるは 船舶に過たる物あらし」と舟のありがたさを述べ、中国古代における舟の起源を含む中国の故事二話、日本の故事六話を収める威徳説話集。謡曲や幸若舞曲、『太平記』等に典拠が確認でき、巻末には竜頭鷁首、軍船、つり舟等と物尽くしのごとく舟の種類が記される。箱蓋裏の極には「詞書飛鳥井雅章卿/土佐光成筆」とある。伝本は稀で、本文と絵を共に備えるのは、本書の他に國學院大學蔵本を知るのみ。[2]常盤の嫗(江戸前期写、一軸) 発心往生譚の形を取りながら、老いの繰り言の中に、人間の真の姿を感じさせる物語。夫に先立たれた常盤の嫗は、老いた身の儚さを嘆き、俄に発心念仏を始めるが、唱名の合い間には、あらゆるものを食べたがり、子に対する不平不満などを漏らしたかと思うと、自らの若い頃を懐かしむ。このような老人の寂しさ、俗念・煩悩に満ちた念仏ではあったが、嫗は念願通り往生を遂げる。独白の形を取り、滑稽味に溢れた七五調の文章は、御伽草子の中でも独自の世界を創り出している。[3]小男の草子絵巻(室町末期写、一軸) 出世・栄華を求め、都に上った身の丈一尺の小男が、観音菩薩の縁日で見初めた美しい女性と和歌の才能によって結ばれ、のちに小男は五条の天神に、女性は観世音菩薩として現れる。『一寸法師』と同様の小さ子説話で、身分の低い者が自らの才能で功を成すという、中世庶民の活気を感じさせる作品。また筋立てや歌の類似などから、その成立において『ものくさ太郎』と非常に近い関係にあることが認められる。4『小男の草子絵巻別本』に比べ、中世的な要素を多く持っており、諸本の中にあって比較的古い本
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