今号の巻頭を飾るのは、特集1「映画で倫理学:フィクションもまたドキュメンタリーである」。老いた母親と自閉症を抱える息子の日常を描いた映画『梅切らぬバカ』(出演:加賀まりこ、塚地武雅)の和島香太郎監督をお招きして、「障害」「家族」「ケア」などをテーマに哲学・倫理学研究者がお話を伺っています。障害を抱える人を撮るときや、作品の演出をするときに、つくり手に求められる倫理や生じた葛藤といったシリアスなテーマから、撮影中の裏話まで、和島監督に非常にオープンに語ってもらっていました。応用倫理に関心がある人はもちろん、映画製作に関心がある人も必見です。特集2は「作者の意図、再訪」。「作者の意図は芸術解釈に関与するのか否か」は分析美学上の伝統的な問題のひとつですが、今回は、この意図論争を再活性化するべく、若手美学者二名による論考を掲載。なぜ解釈の適切さを気にするのか、解釈では何が問題になるのか、作者の発言をどう受け止めるべきか。意図論争の「いま」を知ることのできる質の高い特集となっています。特集3は「小山虎『知られざるコンピューターの思想史』」。分析哲学の歴史をヨーロッパからアメリカへたどりつつ、最終的にはコンピューターの歴史にまでつなげる同書は、「文化としての分析哲学」をとらえることをひとつの課題としてきた本誌にとっても学ぶべきものが多く含まれています。今回は、出版の経緯や同書の内容、叙述の仕方等々について、著者の小山虎氏へ同書インタビューを行いました。また本特集後半では、同書の理解を助ける書評記事も掲載しています。そのほか新しく始まる「シリーズ 哲学の居場所を探るために」では本誌の『ここは今から倫理です。』特集チームが中心となって、哲学研究のアウトリーチ活動について探っていきます。好評の
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