己が高徳を恃み賎しき形の沙弥を刑ち以て現に悪死を得る縁 第一烏の邪婬を見て世を厭ひ善を修する縁 第二悪逆なる子妻を愛しびて母を殺さむと謀り現報に悪死を被る縁 第三力女力を試みに〓(かく)し縁 第四漢神の祟りに依り牛を殺して祭り又放生の善を修して以て現に善悪の報を得る縁 第五誠心を至して法華経を写し奉り験有りて異しき事を示す縁 第六智者変化の聖人を誹り妬みて現に閻羅の闕に至り地獄の苦を受くる縁 第七蟹と蝦の命を贖ひて放生し現報を得る縁 第八己が寺を作り其の寺の物を用ゐて牛と作りて役はるる縁 第九常に鳥の卵を煮て食ひて以て現に悪死の報を得る縁 第十〔ほか〕9世紀初頭に成立した日本最古の仏教説話集『日本霊異記』は、これまで主に国文学の立場からの研究成果として多くの注釈書が刊行されてきた。本書は歴史学の立場から『日本霊異記』を検討したはじめての注釈書。『日本霊異記』中巻を扱う本書は、真福寺(大須文庫)本を底本として用い、校異や詳細な註、説話等の関連史料を網羅的に提示するほか、随所に補説・地図を設け、学術研究に益の有る情報を提供する。【解説】本郷真紹(立命館大学文学部教授)
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