遠くなった戦後の昭和、戻らない時間への喪失感と寂しさを抱いて都会に住む昭和世代の誰もが感じる今を書き綴ったイラストとエッセイ。遠くなった昭和、戻らない時間への喪失感と都会に住む昭和世代の誰もが感じる今を、デザイン溢れるイラストと遺したい言葉で綴る1ページ読み切りのエッセイ集「東京ストーリー凸凹」。新しい都会のシニアに贈る宝石のような一冊。以下、本文の一部をご紹介します。(本文1頁)「人生は楽しいですか」突然の質問だった。私は一瞬躊躇し少し時間を置き「いやー楽しい事はそんなにないですねー」と答え彼を見た。八十に近い彼は「ないよねー」と答え「人生って何だろう」と呟いた。「人生なんて何もないし、只この瞬間存在しているだけかなー」と苦笑いし別れ、歩きはじめた。私達は最も単純な問いに答える事ができない・・・(中略)人生は思ったよりずっと短いと知らされた。(本文4頁)高校野球のテレビに目をやり「どこ出身」と隣の客が聞いて来た。狭い新橋の立ち飲み屋は五人も入れば満員皆故郷の高校に胸を張る。・・・(中略)あの時から高校野球は置いてきぼり時が私を追い越して「高校野球は青春です」と答え気が付けば、熱い想いも夢も置いてきぼりのまま人々は都会に住み狭い空間で夢に追いつけない。(本文21頁)ボイジャー一号は飛んでいる、確実に。最も遠い星間空間を四十年以上かけて今も・・・・・・(中略)「どうしてそんなに明るく楽しいの」と聞いてみた。答えはしないが分かった気にさせる「お月様ってすごいね!」酔っぱらいの傍らでコオロギが答えた、都会の小さな公園。「君は公園の隅を目指して旅をしたかい?」ボイジャーのように俺も冒険はしたかったけど、たぎる心を置き去りにして無難にここまで来た。今からだってあの明るい月にも行ってみたい「
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