村上春樹ファンには、とりわけ彼の短篇が好きだという人も多い。この作家の短篇小説には、"短篇"という形式において、長篇とはまた異なる、比喩や象徴性に優れた村上ワールド独特の魅力があるからだ。著者は、村上春樹作品をデビュー作「風の歌を聴け」(1979年)以来、「自分たちの物語」として鮮烈に受け止めてきた、コアな読者世代。村上春樹と共に同時代を呼吸してきた感覚による読解は、ほかの研究・批評書とは異なる肌理をもち、本書自体が、村上春樹のテイストを有している。村上春樹の小説を、仕掛け共々、隅々まで楽しめる評論である。村上春樹の短篇15作品と、村上訳のアメリカ短篇小説3本(カーヴァー、フィッツジェラルド)を、春樹ファンに向けてディテイルに踏み込んで語る。緻密に記憶された過去―「午後の最後の芝生」誤謬、あるいは小説の仕掛け―「中国行きのスロウ・ボート」語り手の気づかい、あるいはおせっかい―「納屋を焼く」フーコーを読む「私」―「眠り」呪縛からの解放―「パン屋襲撃」「パン屋再襲撃」長篇小説の始動モーター(1)「螢」長篇小説の始動モーター(2)「ねじまき鳥と火曜日の女たち」足された「、」―「めくらやなぎと、眠る女」青少年向けのテクスト―「沈黙」映画化された村上作品(1)「トニー滝谷」映画化された村上作品(2)「四月の晴れた朝に100パーセントの女の子に出合うことについて」話してもらいたがるスケッチ「ハンティング・ナイフ」ブラジャーをはずす女「蜂蜜パイ」メタフィクションの作動『東京奇譚集』母による子殺し、あるいは村上春樹によるラカン「緑色の獣」ズレる二項対立「ささやかだけれど、役にたつこと」(レイモンド・カーヴァー著/村上春樹訳)もうひとりの「集める人」 「収集」(レイモンド・カーヴァー著/村上春
Honya Club.com