20世紀英国文壇の重鎮、エリザベス・ボウエン(1899ー1973)。二度の世界大戦を経験した20世紀にボウエンが見た荒廃と絶望は、今も終わりが見えない―イギリス伝統の風習喜劇に実存主義的視点を持ち込み、ゴーストに人間の心理の深奥をさぐらせるゴシック性。ボウエン文学の稀有な魅力に迫り、その全容の研究成果を問う。ボウエンの文学的評価の変遷と現状―ボウエンという遠雷ボウエンにとっての場所とアイデンティティ―文学的ヴィジョンの核心アングロ・アイリッシュとしてのボウエンの源流―『七たびの冬』にみる自我の形成「熱気」から「残骸」へ―ボウエンの『日ざかり』とイシグロの『日の名残り』に見る冷戦構造ボウエンと乱舞する怪奇幻想の世界―そのゴシック小説の水脈を探るボウエン文学の土壌としての少女領域―『エヴァ・トラウト―移りゆく風景』を中心にして"もの"は語る―人・家・自然が生み出す詩的でない言葉語られない過去をめぐって―『心の死』におけるゆがんだ世界、ゆがめられた心『日ざかり』における饒舌と寡黙―アンチロマンス・アイデンティティ・戦争虚構という孤独の言葉―『エヴァ・トラウト』における語りえない言葉を求めて〈どこにもない場所〉を生きる―「あの薔薇を見てよ」における場所の狂い、ファンタジー、そして無時空間を飛翔する想像力―「幸せな秋の野原」を読み解く〈私〉が〈彼女〉になる時―「第三者の影」、「林檎の木」、「幻のコー」論戦争のエピファニー―「ラヴ・ストーリー 一九三九」、「幻のコー」を中心にロンドン空襲下のさまよえる孤独な魂―ボウエンとグレアム・グリーンの短編を比較してハーディを通して読むボウエン―隠れた共通点を探ってボウエンのT.S.エリオットとの邂逅―私人、作家、書評家としてボウエンが見た若い娘たち
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