日本近代文学を有名作家だけでなく無名作家群からも見渡すと、メディアの勢力によって文学がつくられていった大きな流れが見える。島崎藤村が発行した婦人雑誌『処女地』の女性達が様々な新聞雑誌に発表した作品を手がかりに、文学生成の場を解き明かす。無名作家からも日本近代文学を見る第1部 大正文壇と藤村の読者(小説家協会・無名作家同盟から見る大正文壇―藤村に師事した青年達;新聞連載の「告白小説」・『新生』の生成と受容の場;藤村『新生』に嵌め込まれた節子の手紙;藤村「嵐」の評判―所謂私小説論争と関わって)第2部 『処女地』とその執筆者達(藤村発行の婦人雑誌『処女地』の再検討;『処女地』に執筆した『女子文壇』出身の作家達―生田花世、加藤みどり、鷹野つぎ、若杉鳥子、若山喜志子;『処女地』に執筆した多様な作家達―池田小菊、川島つゆ、澤ゆき、島崎静子、細川武子、正宗乙未;『処女地』に執筆した無名の女性達―モダンガール大井さち子・画家植原久和代・女塾長茂木由子など)第3部 少女小説・労働運動・戦争・メディア(伊東英子「凍った唇」―『少女画報』の伊澤みゆき・『青鞜』の濱野雪だった作家;織田やす―初期女性労働運動・覚醒婦人協会との結節点;戦時下における『処女地』の女性達;メディアの勢力と日本近代文学―『処女地』作家群像から)日本近代文学を有名作家だけでなく無名作家群からも見渡せば、メディアの勢力によって文学がつくられていった大きな流れが見えてくる。本書は、有名作家と無名作家・男性作家と女性作家・作家と読者との双方を見、雑誌を他の新聞雑誌との連関の中で捉える。島崎藤村の全集未収資料を駆使して藤村文学の新たな特質を捉え、藤村の所謂「私小説」の読まれ方を明らかにする。また、男女の無名作家の主張から「文壇」におけ
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