真澄は道奥・蝦夷地への五十年にも及ぶ紀行に、辺土の風光と民俗生活を詳細に書きとどめている。しかし、すでに旅人として出立し、私たちの前に去来する真澄自身の前半生については全く不明の謎につつまれている。本書は真澄とともにたどる周到な取材行を終えた著者が、旅への鋭く深い洞察をもって、ほぼ生涯が旅人であった真澄の人間像に旅人であることの意味を掘り下げる。道奥への旅(『伊那の中路』以前;釜井庵と古今伝授;葡萄峠越え)道奥の黄金の山(雪の越年;わたしの『秋田のかりね』;天明の飢饉;錦木塚・鹿角郡;雪はいよいよ降りて)蝦夷島巡遊(島渡り;松前・江差・太田山;『えぞのてぶり』)下北と津軽(下北の四季;津軽野;十三湖・深浦・暗門の滝;津軽藩採薬御用)雪の出羽路(雪のみちのく;太良鉱山・釣瓶落峠;雪の森吉山嶺;米代川・比内付近;八郎潟・男鹿半島;終章)〈日本史上の人物を「旅人」としての観点でとらえたシリーズ『日本の旅人』からの復刊〉 昭和48年から淡交社より刊行された『日本の旅人』は、池田彌三郎、奈良本辰也両氏を中心に構想され、日本の歴史上の人物 を「日本の旅人」として15人を採択し、それぞれ当時の著名な執筆陣を迎えて著された全15巻のシリーズでした。今回、その 中から「菅江真澄」の巻を復刊します。菅江真澄は、その生涯のほとんどを旅の空に過ごし、その先々で人々の暮らしを丹念 に記録しました。柳田国男は菅江を「日本民俗学の開祖」と称え、その功績を高く評価しています。著者は、代表作『かさぶ た式部考』、『常陸坊海尊』などで日本の民俗に取材した戯曲を著わした秋元松代(1911ー2001)氏。
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